EASEプログラム スタディセッション 開催報告
「専門家でなくても、子どもを支えられる」
2026年4月19日(日)、オンラインにて「EASEプログラム スタディセッション」を開催いたしました。定員20名を超えるお申込みをいただき、支援実践者・研究者・教育関係者など多様なバックグラウンドをお持ちの方々にご参加いただきました。誠にありがとうございました。
今回のテーマは、「WHO・UNICEFが共同開発した予防的メンタルヘルスプログラム EASE(Early Adolescent Skills for Emotions)を学ぶ」でした。米国 The New School for SocialResearch のアダム・ブラウン教授をお招きし、ニューヨークでの実装・研究経験をもとに、EASEの設計思想と日本の実践への示唆について語っていただきました。本記事では、当日の様子と参加者から寄せられた声をダイジェストでお届けします。
今、ここから始まる理由
日本では、若者の自殺率が先進国の中でも高い水準にあり、子どものメンタルヘルスは喫緊の社会課題となっています。一方で、「メンタルヘルス支援は専門家の領域」という意識は根強く、学校や地域の現場ではリソース不足が続いているのが実情です。
EASEは、そうした状況に対して一つの選択肢を提示するプログラムです。専門職ではない支援者(放課後支援などの市民団体のスタッフ・地域の大人たち)が実施可能な設計であり、すでにニューヨーク市内の市民団体と連携して実装・研究が進められています。
Toiは、このプログラムが日本の予防的メンタルヘルス研究・実践にとって多くの示唆を持つと考え、実践者・教育関係者が少人数でじっくり学ぶ場として、本スタディセッションを企画しました。
講演の三つのポイント
当日は、アダム・ブラウン教授に加え、The New School Center for Global Mental Health のティナ・シュウ氏、リンダ・ハン氏にもご登壇いただき、以下の流れでセッションが進みました。
講演で触れられた主要なポイントは以下の3点です。
1. 「非専門家が担える」という設計思想
EASEは、リソースが限られた環境での実施を前提に開発されており、精神科医やカウンセラーがいなくても、地域の支援者が一定のトレーニングを経て実施できます。
2. 子どもだけでなく、保護者も対象にする
EASEはケアラー(保護者・身近な大人)向けのプログラムも含んでおり、子どもを取り巻く環境全体にアプローチします。「大人が横断的に関わる重要性」を考えさせてくれるものとなっています。
3. 「翻訳」ではなく「共につくる」文化的適応
EASEのニューヨーク実装で特に印象的だったのが、文化的適応への丁寧なアプローチです。表層的な適応(Surface Adaptation)と深層的な適応(Deep Adaptation)*の視点から当事者からフィードバックをもらいオリジナル教材のカスタマイズが行われています。*注釈)文化的適応には、言語、イラスト、表現などを現地に合わせる表層的適応と、その文化における概念の捉え方や価値観を深く理解し教材に反映する深層的対応がある。
▶講演録画はこちらからご覧いただけます
🇺🇸 英語:https://youtu.be/kmDXK46ls7I
※ プレゼンテーション資料の著作権は発表者に帰属します。無断転載・複製はご遠慮ください。
参加者からの声
後半40分の質疑応答では、予定時間を超えて質問が途絶えませんでした。事後アンケートでは、参加者が特に関心を持ったテーマとして「EASEの設計思想」が87%、「日本・異文化的背景への応用可能性」(67%)、「研究と実装をつなぐ方法論」「アダム教授の実装・研究の経験」(各60%)が続きました。
自由記述では、以下のような声が寄せられています(一部抜粋)。
「日本でも若者の自殺問題が深刻な中、NYですでに実装されていることに感激を覚えた」
「若者にとって安心して頼れる存在である支援者が、より専門的なスキルを学ぶことで、その人自身の心身の健康も高まっていく点に大きな価値を感じる。その結果、無理なく、より深い愛情やあたたかいまなざしを若者に向けられるようになる、非常に意義深いことだと感じる。」
「地域でメンタルヘルスの問題を身近に扱い、子どもや若者やケアラーがメンタルヘルス支援のプログラムを気軽に受けられる環境があることは素晴らしいと思う。」
「非専門家でも実施できるという点は、現場にとって大きな励みになる」
「(EASEのような予防的メンタルヘルス支援プログラムを日本に導入するとしたら)文化的な課題(スティグマ、学校現場の多忙さ、生徒側の優先度が低い、言語の壁など)はあるので、だからこそ丁寧に関係性を作りながら取り組むことが必要」
寄せられたコメントの熱量から、日本における非専門家による予防的プログラムへのニーズの高さが伺えました。また、実践者目線からの示唆深いご意見は大変勉強になりました。
次の一歩へ
Toiは今後、EASEに関心を持つフィールドパートナーの皆さんとともに、日本の文化的・制度的文脈に即した適応と実装の可能性を、一歩一歩探っていきたいと考えております。
今回のセッションを通じて生まれたつながりを大切に、支援実践者・研究者・教育関係者と連携し、子ども、そして周りの大人たちが、自分たちのペースで、自由と自律、そしてつながりを取り戻していける状態を支えていきます。
引き続きToiの活動にご関心をお寄せいただけますと幸いです。
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